ふうわり野菜物語

2年ぐらい前に作らせていただいたステンドグラスの玄関灯。 
今頃になって……「お月様と種」「風と双葉」「お日様と野菜」の一面ずつ、ひと続きの物語のような小さな詩が生まれてきました。恵みの雨のこの時期に、野菜の気持ちに思いを巡らせていただけたら嬉しいです。
…♡…
ふうわりオーガニックファームさんは日高市で有機農業を営んでいます。三人の娘さんと田んぼや畑にでたり、料理をしたり絵を描いたりしてとても楽しそうです。
(ご自宅を都幾川木建で設計させていただいた縁でステンドグラスのご依頼をいただきました。)
そんなかわいい女の子たちと働く農家さんと出会うと、私自身の小さいころを思い出します。
私は長野市の農家の5人姉妹の四女として生まれました。父は戦前は東京の日本橋で育ち、戦後、復員してから、疎開先の祖父の実家がある長野で農業をして生きていくことを決めました。父と母と祖母はそれまでの豊かな暮らしから一転、重労働の貧しい生活に変わり大変な苦労をして私たちを育ててくれました。そんな暮らしの中でも、家族総出で働いた田植えや稲刈り、りんご取り、味噌醤油作りや暮れの大掃除などは、今の私たち姉妹にとっては宝物のような思い出です。
小さいころは、遊んでいる友達をうらやましく思いながら、いやいや手伝ったりもしていましたが、田んぼのミズスマシやオケラや蛙や、畔に蒔いた大豆の芽、りんごの花、手に触れ、足に触れ、五感で感じたいろんなものが私たちの体や心をつくってきてくれたんだなあと思います。
うちの近くにもたくさんの若い有機農家さんがいます。自然相手の農業、ご苦労も多いと思いますが、田んぼや畑で育っていく子供たちの未来が豊かなものであることを祈らずにはいられません。

土の中

青く透き通る呼吸をして
一粒の種は
眠っています

月のしずくが
祈りの道を通って
ひそかに降りてくる…

そして

露たちといっしょに
やわらかい土に
沁み入っていきました


 

種は目覚め
外の世界に出てみたら…


そこには
三人の女の子が待っていて

ふうわり

やさしい風が吹いていました。

 

 



 

太陽のひかりとちからをあびて

おてんとうさまの伝言を聞いて

雨の音で踊り

野菜たちはうれしくなって

そして
大きくなっていきました。