肉まん天使

だんだん寒くなってきて、肉まんがおいしい季節になってきました。

この写真は、十数年前に、当時中学生だった知人の子が描いた肉まん天使の絵です。落書きのようにその場で描いたものですが、発想がユニークで生き生きとしてかわいいこの天使の絵を長年捨てられずに壁にかざっていました。そして二枚目の写真は、8年ほど前にこの絵をもとに私が木に彫った肉まん天使ペンダントです。

 


 

先日の朝ドラ「エール」で、主人公の裕一が原爆投下後の長崎へ、「長崎の鐘」の著者の医師に会いに行き、そこで「どん底に大地あり」という言葉に出会う場面がありました。そのシーンを見た時、ふいに姪が書いた作文とこの天使の絵が脳裏に浮かびました。

 


 

彼女は中学のころ、いじめにあっていたそうです。そのころに書いた作文を見せてもらったことがあります。下に落ち続けている時はとても恐ろしかったけど、足が底に着いたら以外にも安心したという内容の、中学生が書いたとは思えない絶望をテーマにしたという文章でした。

 ドラマを見ながら、はじめて私は思いました。彼女はいじめの暗い闇の底で漫画の天使の光に出会ったのかもしれない。この肉まん天使を、これまで私はユニークな肉まんのキャラクターとばかり思ってきましたが、苦しんでいる少女をユーモアをもって助けにきてくれた、ほんまもんの天使だったのかも…とも思いました。振り返ってみれば、この木彫りのペンダントをプレゼントした相手もやっぱり複雑な環境で育ち、世間の人の表も裏も見すぎて苦しんできた少女でした。

 

 その後、彼女は高校時代は漫画を描くことに熱中し、美術大学を出て、学生時代にアルバイトをしていたゲーム会社にそのまま就職して、今はアニメーションの仕事をしています。

 アニメーションの語源は、魂や生命を意味するラテン語アニマからきているそうです。この肉まん天使にも命が吹き込まれて動いて、今も人を笑顔にしてくれていることを祈りたい気持ちになりました。